1.経済はどうなる
デフレ脱却
アベノミクスが成果を上げて、景気回復しつつあると言われています。長かったデフレからの脱却を私も期待しています。しかし、私は楽観的な見方に違和感を覚えています。景気回復は一時的なものに終わってしまうのでは、という心配です。
超金融緩和のリスク
まず、「1本目の矢」、異次元の金融緩和は確かに円安を招き、輸出を増やし、景気回復の一助になっています。マクロで見たときに、輸出の増加が全体の景気を押し上げていることは間違いありません。
ただ、将来景気回復期には、金融緩和策をやめなければいけない。その出口のところが果たしてスムーズにできるのかどうか。そこに大きなリスクが残されていることは、最近の米国の例を見ても明らかでしょう。
出口に入ったところで、金利が急激に上がるということにもなりかねません。そうなれば、市場は混乱し、過大なインフレのリスクも出てくるわけです。そのとき最も影響を受けるのは、弱い立場にある国民です。
公共事業は選択と集中で
公共事業の増加についても、短期的には景気を押し上げています。しかし、現場では人手不足で人件費が上がり、資材価格も上がっています。そして、これを長く続けるということになれば、財政を悪化させることは間違いありません。
「公共事業は悪だ」と言うつもりは全くありません。防災やインフラ整備をはじめ、必要な公共事業はあります。それでもあえて、民主党政権の時代には、選択と集中で公共事業予算を3割カットしました。将来世代のため、財政の健全化に重点を置いたわけです。
いまやそういったことは忘れ去られ、公共事業予算が大幅に増え、国民の中にもそれを歓迎する声があります。しかし、そういったバラマキでどんどん借金を増やしてきてしまった過去の失敗を、いま繰り返しているだけではないかと思います。
3本目の矢こそ本命
大事なことは「3本目の矢」、規制改革や成長戦略です。民主党時代に道筋をつけたTPP(環太平洋パートナーシップ)協定やASEANとの経済連携協定なども重要です。一つひとついろいろな困難があります。例えば、規制改革であれば、いろいろな既得権とのぶつかり合いになりますので、多くの支持団体を持つ自民党にとっては、民主党よりも更に困難な課題です。TPPについても、国内対策を含めて逃げずにしっかりと取り組んでもらいたいと思います。
人口減少が始まった日本で経済成長していくためには、生産性を高めるしかありません。これが「3本目の矢」の意味なのです。自民党ではできない政策もあれば、自民党だからこそできる政策もあるでしょう。いい政策であれば、しっかりと後押しをしていきたいと思います。
2.財政再建を忘れるな
消費税引き上げは着実に
私は、日本が抱える様々な困難の中で、最大のリスクは財政だと思います。
国だけで1000兆円を超える借金を抱えて、5年もつかどうか、10年は絶対もたないと私は考えています。いままで大きな赤字を抱えた国は、最終的には戦争か超インフレで解決するしかなかったとさえ言われています。
日本も戦前の大きな借金を戦後に預金封鎖して、100倍近い物価上昇で借金をいわば帳消しにしたわけです。預金が消えて苦しんだのは国民でした。
もちろん、そんなことをいま繰り返すわけにはいきません。政府は、2020年までにプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化することにしていますが、それは財政を立て直す第一歩として重要な意味があります。
財政がしっかりしなければ、社会保障も持続できません。私は強い危機感を持って、消費税増税を決めました。10%への引き上げも、経済によほど問題が出ない限り、実現しなければならないと考えています。
5兆円の経済対策は疑問
消費税引き上げのショックを和らげるために、安倍さんが10月に5兆円規模の経済対策を打ち出しました。私は、規模として大きすぎるし、内容も問題があると思っています。
消費税引き上げが経済に一時的に悪影響を及ぼすことは間違いありません。ここ数年、ショックを和らげるための短期対策は必要ですが、それ以上のものを経済対策の名のもとに財源のあてなく行うべきではありません。
増税したものの、結局経済対策として法人減税や公共事業に使われてしまったのでは、何のために増税したのか分からなくなってしまいます。消費税は社会保障にのみ使うことは国民との約束です。
法人税率の引き下げは賃上げにつながるか
安倍総理は、法人税の減税が賃上げにつながると言っています。法人税を払っているのは利益の出ている企業ですので、7割を占める赤字の企業にとっては、法人税の減税は効果がありません。したがって、そういった企業が減税を理由に賃金を上げるということにはなりません。賃上げは必要ですし、法人税減税も決して反対ではありません。しかし、この2つは結びつかないのです。
恒久法人減税を5%やれば2兆円、10%やれば4兆円の財源が必要になります。その財源の手当てなくして減税をやれば、結局赤字国債の増発か、あるいは、引き上げた消費税を財源に充てるということになりかねません。
進まぬ歳出削減
財政を立て直すために、経済成長による税収増と増税に加えて、歳出削減が必要なことは言うまでもありません。
民主党時代の事業仕分けは、予算の削減だけでなく、予算の内容を明らかにし、国民的な議論が行われたことに大きな意義があります。
私は副総理兼行政改革担当として独立行政法人の改革や公務員の定員の削減などに取り組んできました。
例えば、私が国家公務員の新規採用の6割削減を行ったときに、メディアからも相当厳しく批判を受けました。公務員定員数の30万人の1%にあたる3000人を1年間で純減するという計画も、霞が関からは根強い抵抗がありました。しかし、そういうものを乗り越えて、強い決意で実行しました。
安倍総理を見ていると、予算を使う話は多いが、削減の話はほとんどありません。厳しいことも、より真剣に進めてもらいたいと願っています。
3.エネルギー議論は冷静に
いろいろな方とお話をすると、原発について厳しいご意見をいただくことがあります。
民主党も、新たな原発は造らず、将来的には原発ゼロになるわけです。他方で、原子力規制委員会が安全だと判断したものに限って再稼働を認めるとの考えです。
これに対して、再稼働も認めるべきではないというご意見もいただきます。福島の厳しい現実を見れば、すべてやめるべきだという意見があるのは理解できます。ただ、その場合にどういう問題があるかということも、併せて考えなければならないと思います。
石炭やガスによる発電を増やしていけば、CO2が発生し、地球温暖化問題がより深刻になります。世界の学者(IPCC:気候変動に関する政府間パネル)はこのままでは今世紀末までに最大で気温は5℃、海面水位は82㎝上昇すると警告しています。
将来の方向性としては、自然エネルギーにより多く依存することが正しいと思います。ただ、いまの技術ではコストがかかりすぎますので、電気料金が上がるという問題は避けられません。
したがって、安全性、地球温暖化、そしてコストといったことの総合判断を冷静にしないといけません。だからこそ、この問題は難しいわけです。
どの程度の省エネができて、必要なエネルギーを何で賄うかということについて、中長期的な計画を示し、多くの国民の皆さんの理解を得ながら、エネルギーの問題は進めていく必要があると思います。
4.日中・日韓関係は重要
日韓関係を改善すべき
安倍総理は就任以来、活発に外交を展開しています。特に、海外を頻繁に訪問していることは評価できると思います。
しかし、安倍総理が言うほど、日米両国が緊密な連携をとれているかというと、必ずしもそうではないと判断しています。日本の対韓国と対中国の政策については、米国政府は懸念を抱いていると言うべきだと思います。
特に日韓関係は、民主主義や市場経済という価値観を共有し、米国から見れば、韓国も日本も重要な同盟国なので、日韓が対立している状況を何とかして欲しいというのが米国の本音でしょう。
韓国側の主張にも首をかしげることがありますが、やはりここは大局を見て、日韓関係を立て直さなければなりません。そのことに高い優先順位が置かれるべきだと思います。
安倍総理は、「ドアはいつも開いています」と、首脳会談を呼びかけていますが、従軍慰安婦の問題や安倍総理の歴史認識に対して韓国側が持っている疑念をなくす努力が必要です。総理になる前の過激な言動、総理になってからも誤解を招きかねない安倍さんの発言が制約になっているのです。
日韓関係というのは、経済的にも極めて相互依存関係が進んできており、国民レベルでも交流が深まってきています。政治レベルでの対立が改善していないことは大変残念で、より真摯な努力が求められます。
日中関係は大局に立って
日中関係には、尖閣諸島という問題があり、ここは日本としては譲るべきではありません。国有化したことについて中国側は批判をしますが、これは中国に対し過激な発言を繰り返していた石原都政が所有するのと比べれば、明らかに望ましい対応だったし、そのことは中国側も分かっていたはずです。
いろいろな理由があって現在の厳しい対立状況になっていますが、この対立状況が軍事的な対立ということにならないように、細心の努力を双方払わなければなりません。同時に、尖閣の問題は、日中関係全体の一部にしかすぎません。日本は中国を、中国は日本を必要としているし、アジアや世界のためにも日中関係は重要であるとの大局に立って、両国関係を改善していく努力が求められると思います。
安倍総理には、広い視野に立って、是非一歩踏み込んだ対応をしてもらいたいと思います。
5.進めなければならない選挙制度と国会の改革
選挙制度改革は国民との約束
衆議院の選挙制度改革については、やるべきことは2つです。1つは定数削減、もう1つは一票の格差の是正です。
定数削減は、野田総理と安倍自民党総裁との最後の党首討論で約束したことです。消費税の引き上げで国民に痛みを強いるときに、国会議員だけが特別ということは許されません。安倍総理には是非約束を果たしてもらいたいと思います。
一票の格差の問題は、民主主義の最も基本というべき重要なテーマです。住んでいる選挙区によって投票の権利に大きな格差があるということは、是正しなければなりません。300の小選挙区を5つ減らす、いわゆる「5減案」がすでに成立をしていますが、これでも選挙区の最大格差は1.998倍で、現時点では2倍を超えています。
2011年の最高裁判決は、47都道府県に1議席を割り振ったうえで、残りの253議席を比例配分するというやり方に対して、「憲法上の合理性がない」とはっきり判示しています。
こういう中で、民主党は比例・小選挙区ともに定数を削減し、小選挙区は人口に比例して各都道府県に議席を配分するという極めて理にかなった提案をしています。最高裁の要求に応えるのはこれしかないと思っています。
国会を機能させるための改革
なぜ国会改革が必要か。それは国会が機能していないのではないかという疑問を多くの国民が持っているからです。実際、効率が悪く、十分な審議が行われていないというのが現状です。したがって、効率的な運営と十分な審議を車の両輪とした改革が必要です。
効率化に関しては、例えば、私が外務大臣のときは、国会審議のため海外になかなか行けず、代わって副大臣に国際会議に出席してもらったり、週末ごとに各国を訪問し、土日に外相会談や首脳との会談をしていました。
消費税の議論のときには、野田総理も週3~4日間、国会に朝から座っているというのが当たり前でした。これでは総理大臣も十分な仕事ができません。
審議の充実という意味では、例えば、最近は議員立法が増えています。しかし、その議員立法が一度も審議されることなく廃案になってしまうことが非常に多いわけです。議員立法についても、国会で真摯に議論しなければいけません。
あるいは、党首討論という制度がありますが、事実上形骸化し、機能していません。そういったところについて、きちんと見直す必要があります。
国会がきちんと機能し、国民から信頼されるよう、審議の充実と効率化を車の両輪として、しっかりと議論していくという観点で議論を深めたいと思っています。
※「岡田かつや後援会会報2013年冬号」より