
(写真はBBCニュース)
パキスタン元首相で野党党首のベナジール・ブット(Benazir Bhutto)女史54歳が暗殺されました。痛恨の極みです。2008年1月8日の総選挙に向けた活動を本格化させた矢先でした。
先ほどのエントリで平成元年(1989年)の大喪の礼について書いたとき、パキスタンのブット首相が竹下登首相と会談(弔問外交)をしていた姿を思い出しました。
その直後、入浴中におふろラジオで一報を聴き、あわててパソコンの前に帰ってきました。
正直、今回、亡命先の英ロンドンから帰国した時点で、“覚悟”はあったと思います。デモ参加を申し出て、ムシャラフ大統領の命令で自宅軟禁され、きょうは野党の集会に出ていたとのことです。
しかし、パキスタンの3人のスター政治家(ブット、シャリフ、ムシャラフ)の一人であるブットさんの死で、パキスタン国内情勢が緊迫化するのは必至だと思われます。
27日、死亡する直前、パキスタンの首都イスラマバード近郊ラワルピンディの集会で支持者に手を振るブット元首相(ロイター)=掲載はasahi.com
【ヒラリーの憧れ】
米国でも、ヒラリー・クリントン上院議員がかねてから、ブットさんを「憧れの政治家」と明言していました。二人が出会ったときの写真もあり、「このときにファースト・レディーから自身が大統領の道を歩むことを決めた」というような観測もまことしやかに流れています。
アジアの女性のための政治にとっても大変な損失です。
全世界のイスラム信者(ムスリム)のすべての女性にとってもかなり大きな事件だと推測します。
テロリズムはデモクラシーにおいて、絶対にあってはなりません。
【仮にムシャラフ政権が関与なら、米「対テロ戦争」は根拠が崩壊】
パキスタンはアフガニスタンと陸続きです。
米ブッシュ政権が進める不朽の自由作戦の洋上支援活動(OEF-MIO)の作戦遂行(operation)にも影響が出てくるでしょう。
なにより、米国内の世論が、対テロ戦争に対して厳しくなるでしょう。
とかく国外に興味のない米国民も、ブット女史の神秘的で美しい姿とライフヒストリーが映像として、New Year休暇のTVで流れれば、世論の反発は必至だと考えます。
パキスタンの地図(朝日新聞 asahi.com)
もしも、仮にムシャラフ政権が関与していたということがあったとすれば、陸続きのアジア諸国特にインド、中国やASEAN(東南アジア諸国連合)も反発するでしょう。そして、対テロ戦争の前線基地であるパキスタンの政権そのものが「テロリスト」であるというとんでもないパラダイムシフトが起こります。
アフガニスタンには海が無く、OEF-MIOで海上自衛隊が補給した油は、①パキスタン国内の空軍基地②陸を通じてアフガニスタンに運搬③米の空母――のいずれかからアフガニスタンへの攻撃に使われていたはずです。イラク作戦への転用の問題は今はおいておきます。
仮にムシャラフ政権が関与していなかったとしても、もう一人のスター、シャリフも帰国していますので、パキスタン国内の情勢は流動化します。シャリフはすでにBBCワールドのインタビューに答えて、テロ行為を非難しています。今放送されました。
アフガニスタンにはカルザイ大統領がいます。とはいえ、対テロ戦争は「国vs国の戦争」(国家間戦争)ではありません。「有志軍vsタリバン(アルカイダ)の戦争」です。
だから、「白旗」を上げる人がいないのです。ということは、いつまでも戦争が続く可能性があります。
ユーラシア大陸の真ん真ん中の出来事です。これをきっかけに世界は「文明の衝突」(サミュエル・ハンティントン曰く)に突入してしまうかも知れません。いや、ひょっとして「文明の衝突」が起きているのではないかと今年一年間、私は心配していたのです。このことは他にも賛同してくださるブロガーがいるでしょう。
【政府・自民党の「新テロ特」衆院での強行可決シナリオにも大影響】
まずは情報収集、情勢分析です。外務副大臣などがイスラマバードに飛ばないと行けません。内閣総理大臣臨時代理は町村官房長官でしょうか? すぐに飛ばしてください。
そして、年明けからの「新テロ特」の根拠を政府・自民党が失う可能性もあります。まさにグローバリゼーションで、日本国内政治が、パキスタン国内情勢と米国内世論に大きく左右される事態となってしまいました。
ベナジール・ブットの勇気を忘れないために、ムシャラフ大統領は事実を明らかにしてください。
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