(このエントリーの初投稿日時は2015年4月4日午前8時でそれから4月3日付にバックデートしました)
政府は平成27年2015年4月3日(金)の閣議で、「労働基準法改正案」(189閣法69号)を決定し、衆議院に提出しました。
この残業代ゼロ法案を見るときは「現行労働基準法第14条第1項」をおさえるべし。
労基法第14条は「労働契約」の「契約期間」を定めています。ちなみに、労働契約とは、民法でいう「雇用」とまったく同じ意味です。「労働契約法(平成19年2007年法律128号)」の施行後は、労働法制では「労働契約」という言葉に書き換わっています。
まず14条第1項は、「専門的な知識、技術または経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結する労働契約」という分類、定義を決めています。
この分類はどのような労働者か。その細目は、省令が定めています。省令は法律ではないので国会の審議が不要。与党の厚労大臣が署名で突然変えることができます。
省令、
「労働基準法第14条第1項第1号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(平成15年2003年10月22日厚生労働省告示第356号)」
は、次の人が労働基準法第14条第1項の「労働者」だとしています。
1、博士の学位を有する者・・・ですから、博士は全員対象になります。
2、12の国家資格・・・このうち、公認会計士、一級建築士、薬剤師、技術士が会社員には多いと思われます。
そして、(略)
5、次のいずれかに該当する者であって、労働契約の期間中に支払われることが確実に見込まれる賃金の額を1年あたりに換算した金額が、
「1075万円」を下回らない者としています。
この「1075万円」は、国会の審議無しに、厚労省の一存で「省令」で変えることができます。これを野党・民主党は警戒しています。
ここで、いったんまとめると、博士、会社員や団体職員でである公認会計士・一級建築士・薬剤師・技術士と、年給1075万円以上の労働者(システムエンジニアや、その業種につながる学科を卒業した大学・短大・高専・高校卒業者で就業後5年ないし7年経った者)が、労基法第14条第1項の対象になります。
今次改正法案は、この第14条第1項にもとづく労働者を、すべて「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」と名付けて、労働時間・休日・割り増し賃金の法律による保護から除外する、とした法律案で、抜本的な改正といえます。
実はこの、労基法第14条第1号を改正しようという動きは、以前からありました。
昨年11月21日の衆議院解散の数分前に「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」 が民共の反対、自公維の賛成多数で可決・成立し、今週の4月1日(水)から施行されました。これは、14条1号の労働者の労働契約の期間を5年間から10年間に延長する法律。このため、例えば大学教授で今週から同じ大学で6年目に入った人は、この法律にもとづく有期雇用かもしれませんし、無期雇用かもしれません。この特措法案は昨年の通常国会で、国会技術的には極めて異例な「衆議院で可決して参議院で審議未了ながら閉会中審査になった法案」です。
これが、テレビ放送されていた衆議院解散のニュースの数分前に委員長が報告し、起立し、可決・成立した法律3本のうちの1本です。ニュースを見ていた人も多いでしょう。これとは別に、労働者派遣法改悪法案は解散と同時に廃案になりました。
なので、今週6年目に入った博士は「首がつながった」のだからまだいいとして、それ以外の博士は、物理学だろうがなんだろうが博士なんだから、もっと抵抗して良かったように感じます。筆者(宮崎信行)が最近始めたツイキャスラジオの2015年4月1日の放送で、リスナーの方から、「国公立大学の人は声をあげづらいようだ」との世論を教えていただき、それもそうかなと感じました。ただ、昨年11月の法律を当時どれだけ把握している人がいたのかなとの疑問はつきません。
民主党は野党なので限界があります。法律案を審議未了廃案に追い込むテクニックしかありません。ただ、衆議院厚生労働委員会は、まだ審議入りしていない法案が8本ある状態で、来週から残り11週間の後半国会(ただし延長は確実な見通し)を迎えます。
野党・民主党の岡田克也代表は、労働者派遣法改悪法案(189閣法43号)を「通さないためにどうすればいいかという視点で、いろいろなものを組み立てていきたい」と先月の記者会見で述べており、労働者派遣法改悪法案の審議未了廃案の方を優先する作戦です。
派遣労働者の声と、博士の声のどちらが通るか、両方通るか。ーー昨年の国会では「ハケン」の声が通りました。博士受難の時代ですが、我こそはオピニオン・リーダーたりという気概を持っていただきたい。
以上
(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 2007-2015








