
【平成24年度第1次補正予算(案)に対する基本的質疑2日目 衆議院予算委員会 2013年2月8日(金)】
首長ファイブ(くびちょうふぁいぶ)が登場しました。
日本維新の会の、
日本最大の362万人基礎自治体である横浜市長を2期7年つとめた、中田宏さん。
知事であり、人口114万人、伝統的に公共事業と企業誘致が多い、宮崎県知事を1期4年つとめた、東国原英夫さん。
人口16万人という典型的な中規模都市である磐田市長を3期11年つとめた鈴木望さん。
首都圏近郊ながら人口は8万人にとどまる東松山市長を4期16年つとめた坂本祐之輔さん。
東京23区・特別区で52万人の人口を持つ杉並区長を3期11年つとめた山田宏さん。
このうち、中田宏さんと山田宏さんは1993年日本新党初当選組で国政復帰。そのほかは、私も初めて名前を知る人がいました。首長経験の期数と在職年数が「期×4年間」になっていない、ふぞろいな人がいますが、これは、「平成の大合併による新市長選挙に出馬した経験」があったり、退任理由が「衆院選と選挙日をあわせるため」「参院選出馬のため」などの理由だったりしたようです。首長落選により衆院選に回った人はいないようです。
なお、これまで「中田宏・横浜市長」については、私が首長の理想像としている「高秀秀信・横浜市長」を落選させて就任した首長のため、ネガティブなイメージで取り上げていましたが、もともと、中田宏・衆議院議員は1997年12月、小沢一郎による新進党解党に岡田克也さんと2人で最後まで抵抗した人です。元々そのことは私は知っていましたが、中田さんはきょうも冒頭で、日経新聞の誤報の被害にあった岡田さんを助ける答弁を小野寺五典防衛相から引き出しており、応援していこうと考えています。
まさに、2013年2月8日は、地方自治の歴史に新しい1ページを開けたと言えるでしょう。専門的な用語が多く、メディア受けはよくないでしょうが、立体的な議論が国会で繰り広げられました。
中田宏さんは閉会中審査にも登場していますが、きょうもトップバッターとしてブランクを感じさせない早口で、かなり良い答弁を引き出しました。
中田さんは、きのうの民主党・玉木雄一郎さん同様に「(政府が)本予算で(財政健全化をしたと)胸を張りながら、補正予算で(財政支出を)がつんとやると、財政規律がおかしくなる。今回の補正予算はそれほどまでに特別なものなのか」とただすと、民主党・長妻昭筆頭理事の「そうだ!」の合いの手がマイクを通じて聞こえました。
細川護煕さんを含めて衆院1期生ばかりの日本新党で、初当選直後に各派協議会メンバーをつとめた伝説を持つ山田宏さんは「17年ぶりに国会に帰ってきて、「容貌が変わったね」と言われます、それだけ苦労が多かったんです」と苦笑した後、「衆議院議員だった頃は、歳出のことばかり考えていましたが、区長になってからは、9割方歳入のことばかり考えていました」と振り返りました。松下政経塾・日本新党同期の桜で、総理大臣をつとめあげた野田佳彦さんの政治生命をかけた決断が正しかったことを示唆したようにも、私には感じられました。
【補正予算と本予算、繰越明許の改善を要求も、総務大臣「臨時会を速やかに開け!」】
安倍晋三首相(自民党総裁)は「今回の補正予算はまさに経済の変わり目の機動的な財政措置であり、そのための補正予算であり、(すでに閣議決定済みの平成25年度)本予算(案)では、プライマリーバランスが改善しています」とし、「デフレからの脱却の意思を示すもので、毎回毎回やるわけではない」と答弁しました。自民党お得意の緊急経済対策としての補正予算提出は2度としないとの趣旨の答弁でしたが、中田さんが「繰り返すわけではないということでいいのか」と念押しすると、安倍首相は「何回も何回もやるわけではない」と答弁を修正しました。これに関連して、午後の坂本元東松山市長は、商店街活性化事業で「300億円の補正予算がついているが、(平成25年度)本予算ではいくら計上しているか」と質問し、所管の茂木敏充・経産大臣はいいわけを交えながら、「38億円だ」と述べると、「補正で300億円、本予算で38億円では、残り1ヶ月で使い切っても使い切れない」と批判しました。今まで国会で聞いたことがない論点です。さらにこれに関連し、当ブログが言及していた「繰越明許(くりこしめいきょ)」について、山田元区長は、区の予算の観点から、「自治体は年度内に予算を消化しきれない場合は、(国の)各出先機関に行って、繰越明許の理由を提出しなければならない。これが大変なんです。自治体のせいじゃないのに、たくさんの人と時間を割かねばならず、無駄です」とし指摘。そのうえで、「国の方で(今年度末は)しなくていい、と言ってくれませんか」とダメもとで発言すると、新藤義孝総務大臣は「だから早期成立と早期執行が大事なんです」というなめた答弁をした上で、「テレビを通じて呼びかけたい。全国のすべての地方議会は臨時会を開いて(各自治体の補正を速やかに組んで予算執行と繰越明許をして)ください」と地方分権に逆行する答弁をしました。自民党が参院選に逆転負けする気配を感じざるをえませんでした。
【地方交付税の2300ページの補正係数台帳は総務省令なので大臣もみたことがない】
地方交付税について、中田元市長は、2300ページにわたる補正係数台帳を手に携え、「この(2月の自治体本予算提出の)時期に地方はどれだけ(の地方交付税が新年度に国から)来るか知らない。知るのは5月なんです。新藤大臣は政務官の経験もあるが、この(地方交付税算定のために基準財政需要額と基準財政収入額のならす)補正係数台帳を見たことがあるか」というと、新藤大臣は「見たことはあるが読んだことはない」として、地方交付税の自治体歳入について「地方は分からないと言っているが、あらかた分かっている。その(国と自治体の)信頼関係で担保されている」と答弁。これはたしかに現実的といえば現実的で正直な答弁でしょう。東国原元知事は「地方交付税とはなんぞや、一般の国民のみなさんはなかなか分からないですよ」として、国会の場での議論展開に期待を寄せました。新藤総務相は「地方交付税とは、財源調整機能と財源保障機能がある」とし、「地方財政措置のなかで、後年度(こうねんど)、国が負担する」と言うと、「はいそこなんですよ」と東国原さん。
【東国原さん、「地方交付税廃止も」と大胆提案】
東国原元知事は「地方公務員給与削減による交付税増額」などに縛られていた知事時代を振り返りながら、「地方交付税の先食い」である臨時財政特例債(臨財債)の発行残高がいくらかとただしました。新藤大臣が「45兆円」と答えると、「総理は、この現状をどう思いますか?」とすると、「良い質問だ」の合いの手が入りました。新藤大臣が「最大は景気対策で、地方が元気になれば返せる」と方向性は正しいとはいえ見通しの甘い答弁をすると、東国原さんは「どう考えても交付税の先食いなんですよね。私は返せない、国が破綻するのではないかと懸念している」としたうえで、「地方交付税は廃止したり、あるいは、特別会計に直入(ちょくにゅう)するなどの新しいしくみづくりが必要だ」と提案し、「地方にやさしい政権与党であって欲しい」としました。今後の議論に期待したいところです。
鈴木元市長は、民主党政権が解散前日の2012年11月15日(木)に閣議決定し未提出におわった国の出先機関廃止法案(経済産業局、地方整備局、地方環境事務所)について「道州制の議論も大事だが、それをしていると時間がかかってしまう」とし、民主党法案の成立が現実的だとの認識を示しました。鈴木さんは「国民は国の行政機関というと霞が関にあると思っているだろうが、各地にあります」として、国道1号線の渋滞解消を期待してつくられた国営磐田バイパスが有料制のために誰の役にも立たない状況を打破するために、1代で上場企業を立ち上げた地元財界人らと要望活動をしたときのエピソードを紹介。「磐田市から東の県庁へ行き、そこから、西へ向かい磐田市を車窓に見ながら名古屋にある(国土交通省の)中部地方整備局にいきました。そこで「これは大事だから本省の霞が関に行ってください」と言われて、再び東に向かい、磐田市を車窓に見ながら、東京に向かった。その車中で、社長(商工会議所会頭)が(名古屋名物の)みそかつ弁当を食べながら、「こんなことをしていたら、国がつぶれてしまう」とつぶやいたのを忘れられない」と語りました。民主党法案について、新藤大臣は「法案については全国市長会から慎重にしてほしいとの要望がきている」と述べたほか、安倍首相が「先日福島県でやらないでほしいと言われた」と個別エピソードで対抗。しかし、鈴木元市長のエピソードに、もっとも説得力を感じたのは私だけではないでしょう。
【丹羽委員会の完全自治体に向けて】
東国原さんは「地方分権改革推進委員会(丹羽委員会)が打ち出し、完全自治体(自治行政権、自治財政権、自治立法権)の実現のためには、憲法94条を改正して、地方による法令の上書き権など、義務づけ枠付けの廃止が必要だ」として、具体的に「教育委員会と農業委員会(を自治体の機関として必ず置かねばならないと国の法律が定める)必置規制(ひっちきせい)を撤廃して(自治体の条例にゆだねて)ほしい」と語りました。これに関連して、第45期衆議院で、丹羽委員会の勧告を法律化した、1次一括法(第1次地方分権一括法=「地域主権」のタイトルを衆議院で削除修正のうえ成立)、2次一括法につぎ、3次一括法を民主党政権が提出しながら衆議院解散で廃案になったことについて、新藤大臣は「4次一括法案として今国会に出す」と明言しました。「4次」というのはわかりにくいように感じますが、さっそく今国会でも分権法案が審議されることになります。なお、衆参総務委員会では税制改正法案が5月中旬までのかかる見通しで、会期末ぎりぎりの攻防となる可能性が大。
全体の感想としては、なかなかいいなと感じました。いわば、民主党という政党は、生活者の党として公明党、地方分権(地域主権)が1丁目1番地の党として日本維新の会、改革の党としてみんなの党の3党をたばね、その3党のうえで、唯一衆議院定数の過半数をこえる候補者を擁立できる党として、政権の選択肢を提示する。そこで、岡田内閣として、長妻官房長官、太田副総理、中田総務大臣、渡辺行革担当大臣として調整していくのが、ベストな日本政治のあり方に感じます。そのころまでには、新生党の松沢成文さんや上田清司さん、北橋健治さん、あるいは河村たかしさんが国政復帰して大臣になり、今いる国会議員や前議員は、首長になっていく。そんな雛の論理を想像してしまいました。ただ、少し民主党の存在感が弱くなっていることを正直に認めざるを得ません。もっとウィングを広げて、地方分権を勉強していかないといけません。それと、おそらく明日の新聞の「予算委員会の詳報」では、あまり詳しく書けない記者が多いと感じます。この辺の地方財政・地方行政の世界は、一度はまるとおもしろいものです。私も政権交代ある政治のために、ここ10年近く、地方自治とはごぶさた。「早く帰ってこいよ」とのありがたい声も聞きますが、政治ジャーナリストは、国政と地方を同時にやると共倒れになります。これは私は真理だと思います。そんななか、多くの地方議員さんから、年4回の定例会報告を郵送してもらっていて、その自治体の政務活動費という税金でつくられてることもあり、すべて目を通しています。「10ヶ月連続暫定予算!」という見出しを見て、まだ国政はなんとかなると勇気をもらいます。こういう立体的な議論が国会に持ち込まれた初めての日だと感じます。岡田克也さんはかなり中央集権的な発想が根強いので、ぜひ、大親友の中田宏さんらの実体験を中心に、一度、地方行政・地方財政・地方税制もアタマに入れていって欲しいと願います。
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