配偶者控除を廃止して夫婦控除を新設するなどの所得税法の改正が平成29年度税制改正法案の焦点に

  • 2016-8-30
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 きょう、2016年8月30日付の読売新聞、日経新聞はともに、自民党の宮沢洋一・税制調査会長(参議院議員)のインタビューを載せました。読売・gooニュース(配偶者控除、見直しへ…年末の大綱に改革方針)。

 大要は、所得税の人的控除の配偶者控除配偶者特別控除を廃する方向で与党税制改正論議する、ということです。

 今後は、自民党政務調査会税制調査会が、9月にもインナーと呼ばれる小委員会を開き、12月に全自民党衆参議員参加総会で「平成29年自民党税制改正大綱」を決定。公明党との協議後、政府が12月24日ごろに、「政府税制改正大綱」を決定。

 これをもとに、「平成29年度税制改正法案」を、財務省が「所得税法等改正案」、総務省が「地方税法等改正案」をつくり、来年2月ごろ、第193回通常国会に提出。自民党が衆参過半数なので、原案通り、3月末に参議院で可決・成立するはこびとなります。

 早ければ、再来年平成30年2018年1月に施行、すなわち平成30年2018年末ないし平成31年2019年3月の年末調整や確定申告で納税者は気づき、その翌月・翌年に「効果」を感じることになります。可処分所得が増える人、減る人、がいますから、全国的な選挙の争点や国会前抗議活動はになることは、あり得ません。

 見直しの対象のうち、配偶者控除の要件は次の通り。配偶者特別控除は別です。

国税庁ウェブサイトから引用はじめ]

(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

[引用おわり]

 配偶者控除が廃止されて夫婦控除というようなものが新設された場合、いわゆる「103万円の壁」がなくなることになります。ただ、配偶者控除は年38万円ですが、夫婦控除はそれよりも少額の控除になると考えられます。この場合は、専業主婦でもパート主婦でも、例えば世帯年収600万円の中間層で、月千円以上の負担増になるのではないかと思われます。

 平成29年度税制改正法案では、法人税は、前の年度の法律で、3年間にわたり税率を下げる減税プログラム(手順)条項が成立し公布されています。相続税贈与税自民党政権交代時に盛り込んだ条項の延長が争点であり抜本的な改正ではありません。

 旧民主党税制はそのバイブル的な文書である「2007年税制改正大綱」(古川元久会長、藤井裕久顧問)で、人的控除の見直しをかかげました。政権交代後に法制化された15歳以下の子供に対する扶養控除の廃止と、その見返りとして、子ども手当の支給がありました。法制化されなかった部分では、上記の配偶者控除を廃止(段階的に縮減)して、子ども手当を増額し、他の控除の廃止・縮小とあわせて、その見返りとして、給付付き税額控除(ミルトン・フリードマンが言う「負の所得税」)を導入するスケジュール感でした。後段は、「元民主党衆議院議員」の肩書がある人でも9割以上説明できない世界の話です。

 このため、民主党は「配偶者控除を廃止して夫婦共働き」を推進し、自民党は「配偶者控除を維持して専業主婦を優遇」という、逆方向の家族観を持っていました。このため、民主党政権時に一部有識者子ども手当を「子どもは社会が育てる」と主張しだし、野党・自民党から「子どもは家庭が育てる」という至極もっともな反論で、理論的根拠が薄弱になりました。ねじれ国会に苦労した、野党・民主党岡田克也幹事長が「子どもは家庭が育て社会がそれを支える」と言い直し、その方向性で民主党政権は終わりました。

 ところが、今度は、自民党配偶者控除廃止を言い出しています。すなわち、専業主婦という、「自民党的家族観(あるいは社会観、国家観)」から、「夫婦共働きの1億総活躍社会(というよりも1億総活躍経済)の方向性に逆に舵をとった」ことになります。

 宮澤税調会長の叔父である、宮澤喜一元首相や、渡辺美智雄元副総理らは、自民党の機関紙で、「自民党社会党の良い政策を3年後には取り込んだ。仮に衆議院小選挙区制だったら55年体制の38年間に社会党は3回政権をとっていた」という趣旨の座談会をしました。「自由新報(週刊自由民主に改題)」の、おそらく立党39年だかの記念号に載っていたと記憶しています。

 ちょっと分からないのですが、企業は「配偶者手当」という物を毎月の給与に載せていると思いますが、この手当も各企業が廃止するのではないかと思います。現在これが損金算入がどのくらいできるのか分からないのですが、法人税の「減税」ではないのかもしれませんが、企業の人件費は削減できることになります。

 その一方で、世帯年収500万円で、夫が会社、妻が2人の小学生を育てている場合は、ほぼ間違いなく増税になります。今ですら、厳しい高学歴中年中間層が茹でガエルになります。

 11月12月の自民党本部内の議論が、そのまま来年4月に法律になり、再来年1月から制度になり、それに気づくのは、再来年末の年末調整、生活の苦しさを実感するのは、そのまた次の年の、桜の季節や、夏休みのシーズンとなってきます。

 このしくみを、野党・民進党は何とかしないといけません。与党では頑張りました。その試行錯誤により、野田佳彦氏に「幹事長不適任」と100日弱で引きずりおろされた中野寛成先生が、政権期の半分以上、党税調会長(初期は「プロジェクトチーム座長」の肩書)をつとめるスーパーリリーフをつとめました。

 英国二大政党は、例えば、野党・労働党が「与党・保守党首相(党首)がマンション税を検討しているぞ」と新聞で発信し、ファイスブックで「反対ならシェア」という対立となり、いわば政策そのものの対立となっています。我が国の税制は複雑なため、上記の改革についても、英国二大政党のような議論は不可能であり、それ自体が租税法定主義に反しているような感がします。これに関しては、英国二大政党制を今すぐ日本に当てはめられません。

 ただ下野後に、民進党税制改正のしくみそのものを議論したことはありません。

 私は民進党税制が所得税などでは、圧倒的に正しいと考えます。法人税の政策減税は補助金よりも有効な場合があり、この辺は自民党もシンプルであれば賛同できる面もあります。とはいえ、民主党2007年税制改正大綱から9年、民進党初代税調会長は古川元久さんであることがその正しさを物語っているでしょう。 

 思い入れが強いため、長文になりました。

 利害関係者はご自身で情報をご確認ください。

 また、2016年10月から12月にかけての、日々の自民党本部内での議論は、新聞各紙の報道をご参照ください。日々の自民党本部内の議論を追うことが、自民党の最大の権力源になります。

 繰り返しになりますが、来年2月に提出される法案は国、地方の合計2本の束ね法案として出され、国会審議は2か月未満でしょう。当ブログでは、これに先立つ、代表質問、一般質疑でも中期的な方向性については関心を持っていきます。

 このエントリー記事の本文は以上です。

 2016年、宮崎信行。 

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