
さあ、3週間ぶりに国会が再開しました。まずは福田康夫首相が初めての所信表明演説です。
■国会傍聴記 2007年10月1日衆院本会議・福田総理の所信表明演説■
《写真は共同通信、第168臨時国会で所信表明演説をする福田康夫首相(衆院本会議場)》
【冒頭のヤジ通り 題目は多く、中身は少なく】
福田総理が発言席に登壇し、演説を始める前に野党議員からヤジ。「具体的なこと言えよ!」。
自民党総裁選挙による3週間の国会空白を国民にわびる首相に「解散しろ!解散しろ!」。
結果として、この2つのヤジがすべてを物語っていました。
今回の演説は9月10日の安倍晋三首相の所信表明演説と比べると題目はそろっていましたが、今回は福田首相就任後、初めての所信表明ですから当然です。「改革の継続」を強調しながら、それぞれの題目にぶら下がる具体的な施策はほとんどなく、新首相としての新しい施策は一つもありませんでした。9月26日の就任から5日間も準備期間があったのに残念です。
小泉純一郎首相のように具体的なことを国会で言わないことで、言質を取らせない「国会はぐらかし戦術」でないことを願いたいです。口調も内閣官房長官のときと変わらない感じです。「官房長官総理」というイメージを持ちました。
【関連】第168回国会における福田内閣総理大臣所信表明演説(首相官邸ウェブサイト)
【「与野党の立場を超えた」年金協議を提案→政権のため?国民のため?】
年金問題に関しては「一人一人の年金記録を確認する」と言いながら、安倍前首相が参院選で国民に約束した「宙に浮いた(消えた)年金記録」の2008年3月までの突合作業(名寄せ作業)完了には触れませんでした。まさか、このままうやむやにするつもり?
年金問題の解決について「国会における与野党の立場を超えた議論が再開され、透明で建設的な協議が行われるようお願いしたい」と発言しました。
体(てい)の良い言葉ですよね。こういう発言を信頼してしまう人が多いですよね。辞任表明時の安倍さんの「党首会談を断られた」というの説明に同情する人がいたようですが、あなた、だまされてますよ! 党首会談や与野党の協議会などは部屋の扉が閉められた非公開の議論です。年金問題のような重要な問題は公開しなくちゃいけません。だったら国会です。
福田さんは年金問題は自民党だけではとても解決できないので、民主党に歩み寄る「抱きつき戦法(クリンチ戦法)」をしているのでしょう。3年前の「年金問題に関する3党合意」(3党=自民党、民主党、公明党)はどうなったんでしょうか。「国民のため」と言いながら、自民党政権延命のため「与野党の立場を超えて」議論しようと言っているのなら「解散しろ!解散しろ!」という不規則発言(ヤジ)が一番、当を得ていたのかもしれません。
【「消費税増税」を示唆】
財政改革については「2011年までの基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化は確実に実行する」と2007年1月の安倍首相の施政方針演説の内容に戻しました。そのためには「消費税を含む税体系の抜本的改革が必要だ」とし、消費税増税を検討することを明言したことは特筆すべきことです。
【「都市と地方の格差」は政府内で部署を一元化する】
福田さんは都市と地方の格差について、「地方は人口が減少し」→「魅力が減り」→「人口が減少する」という「悪循環を断ち切る」として、政府内の地方再生などに関する部署を「一元化する」と明言しました。これは官房長官を長く(歴代2位)務めた福田さんらしい行政改革の一案ですので、今後の具体策に期待。「道州制」の実現も強調しました。
【インド洋給油活動継続は「シーレーン」防衛?】
テロ対策特別措置法(テロ特)に基づく海上自衛隊のインド洋でのパキスタン海軍などへの無償給油活動の継続についてです。テロとの戦いは国際社会の共通の利益としたうえで、福田首相は「海上輸送に資源の多くを依存する我が国の国益に資する」と発言しました。これは注目です。安倍前首相は「給油活動継続は国際公約」として、日米同盟の堅持、国際社会の一員としての貢献を強調していたのに対し、日本に来る原油の9割以上が通過する重要な海上輸送路(シーレーン)であるインド洋に日本の海上自衛隊が存在すること(presence)によって、日本の資源が安定的に確保できるという考え方でしょう。約20年ほど前に同じ群馬県出身の中曽根康弘首相(自民党)が「シーレーン防衛」という概念を発表しながら批判を浴び、頓挫したことがありますが、それを思い出しました。
言い換えると、福田さんは“インド洋での給油活動延長は日本のシーレーン防衛でもある”という新しいパラダイム(考え方の大まかな構図)を提示したと言えるでしょう。これは大きな転換です。再来週から本格化するテロ特での自民党と民主党の攻防に一石を投じたと言えるでしょう。
【「自立と共生」は小沢一郎のパクリだよ、総理!】
さて、演説の締めです。「改革の続行にあたって私は『自立と共生』を基本に政策を実行して参りたいと思います」
「自立と共生」という言葉は自民党総裁選挙で福田さんが使って、「アレレ!?」と思った人も多いでしょう。聞き覚えのある言葉だからです。
1993年(平成5年)に自民党羽田派(新生フォーラム21)が離党し、新生党(羽田孜党首、小沢一郎代表幹事)を結党しました。縞のワイシャツを着た羽田さんが右手の拳を握りしめた写真を覚えている30代以上の方も多いでしょう。1993年7月18日の第40回衆議院総選挙、細川護煕内閣が誕生し、「55年体制」が崩壊したあの暑い夏です。羽田さんのポスターやビラには、「自立と共生」の5文字が大きく書かれていたはずです。
9月18日の民主党代表記者会見でも小沢さんは「私は20年前からその言葉を使っている」と述べています。小沢一郎が20年前から使っている言葉を使う。これも福田さんお得意の与野党融和策(野党懐柔策?)の「抱きつき戦法(クリンチ戦法)」でしょう。そしてこれこそ自民党が50年以上政権を維持できた手法です。議会制民主政治において、このような手法は即刻やめるべきです、福田さん!
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