【枝野6月会見詳報】税務署の人員を増やさずデジタル化で「給付つき税額控除」可能との認識示す「自民反対ねじれで中期的」、都議選「つむじ風を党本部が広げる」官僚「非常に厳しい8年間だった」

枝野幸男・立憲民主党代表は、きょう令和3年6月30日(水)、衆議院第二議員会館内「立憲民主党会議室」で月例記者会見を開きました。

大要、次のように述べました。

冒頭発言(1)都議選(2)コロナリバウンド(3)斉木武志衆院議員が精査して分かったオリパラ・プレイブック(4)八街市でのトラックによる児童死傷(5)自らが大臣をつとめた経済産業省のキャリア官僚2人の谷内院支援金詐欺での警視庁逮捕ーーについて。(1)と(5)はこの記事の下の方で書き起こします。

質疑は(1)オリパラ・プレイブック(2)あすの中国共産党100年への党の祝電(3)江田調査会の経済対策中間とりまとめについて福山幹事長の会見とやや相違点がある(4)公明新聞が新都議は五輪開会式当時が初登院だとして共産の五輪反対を批判していること(5)都議選で共産党候補を応援する立憲議員への連合などの反応(6)国勢調査をうけた選挙制度改革について特に参議院の合区解消(7)給付つき税額控除導入と税務署の人員(8)職域接種のワクチン供給停止(9)小池都知事の退院(10)郷原弁護士の横浜市長選出馬最終検討(11)八街トラック事故(12)荒井聡議員の長男擁立と世襲について(13)ファイザー製ワクチンの副反応と政府の情報管理(14)NHK報道の確認(15)自民幹事長の補正の骨格で選挙の発言ーーの15問答。このうち、(4)、(7)、(12)、(14)、(15)についてこの記事で書きます。

「枝野ビジョン」や「2012年社会保障と税の一体改革関連法の附則」にある「所得税の給付つき税額控除」について、デジタル化が効果を上げているので、国税庁・税務署の人員を増やさなくても導入できるとの考えを日本の政治家で初めて示しました。

●給付つき税額控除

枝野さんは「この問題は現在の与党のみなさんがずっと反対してきている」とし、仮に衆院選で立憲民主党が単独過半数も含めて勝っても「衆参ねじれになるので、実行しようとすると中期的に進めると約束したい」と言明。税務署の手間については「ご指摘の通り、税務署の仕事は増えることはありうる」と語りました。これを認めた国会議員はここ10年で初めて。そして「自分も(弁護士資格があるとなれる)税理士の資格があるので、自分で確定申告をしてきた」とし「確定申告する側としては、最近はデジタル化が進んでいる」とし「他の部署との調整のうえで税務当局が人員を増やすこともありうる」としながら、今の人員でできる可能性もあると示唆しました。実際に、スマホによる確定申告は過去最多となっています。

枝野さんは給付つき税額控除について「行政全体を考えれば、低所得の方を中心に、各自治体ごとに、複数のものを複数の役所がバラバラにやっている」としており、歳出入の整理での人員管理の必要性を示唆しました。そのうえで、持論の「消費税額事前還付制度」を導入すると「税務署が所得を把握している状態になる」としました。これは全国民に先に消費税額を還付し、一定の所得があれば、その金額を控除することで、還付・減税の恩恵を得られることになるので、それを申告しない人ならば、それ以下の所得だということを税務署が把握していることになる、との認識です。

ま、難しいですが、確定申告の必要がないと思われる2000万人が、新しく確定申告をしなくても、消費税の5ないし10%分のお金を毎年もらえることになります。「枝野ビジョン」223ページから225ページ参照。ざっくりいえば「ベーシックインカム」とはこのことです。また2009年以降与党・公明党が主張しても「定額減税」ができず「定額給付金」になるのは、上述のボトルネックによるものです。

●都議選「つむじ風を党本部が全員当選をめざす」

4年前、蓮舫代表・前原代表の大分裂につながった都議選。情勢について「定員1の小選挙区から大選挙区まであるので事前の情勢判断が難しい」と、党や、マスコミ、有権者全体のとらえ方の大枠を示しながら「ここから3日間のたたかいで、党本部として最後まで全力で取り組み、全員当選をめざす」と語りました。立憲は9か月で、党本部職員が旧民主の最盛期を上回る100人となり、枝野さんは以前の記者会見でも「人生をかけて立候補している」ことにかんがみ「全員当選」という目標しか語らないとしています。

枝野さんは、「各地を回っていると感触は良い。すぐに衆院選となるが手ごたえを感じている。選挙の風、とよく言うが、季節風とか、偏西風という一方向に広く強く吹く風はないが、候補者・陣営ごとにつむじ風が吹いているという印象だ。それを選挙区全体に広げられるかどうかだ」と語りました。あくまでも、東京都内の都議選に限った発言です。

●公明新聞の共産批判は「民主主義を理解していない」

都議選で共産が「五輪中止」を公約にしていることを公明新聞が「当選した議員の任期が始まる当日は五輪開会式の当日になる」と批判していることを問われて枝野さんは「民主主義というものをご理解されていない。有権者がどういう投票行動をとったのかは、議席数だけでなく、国も都も総合的に受け止めて対応すべきだ」と強調しました。

●経産詐欺、赤木さん、まじめに働く官僚にとって厳しい時期だった

枝野さんは「私が経産省の大臣をしたときは、優秀でまじめな人ばかりだった」と振り返りつつ「自らの役所の補助金を(詐欺して警視庁に逮捕されるという)考えられないような事件が起きた」と述べ、国会への資料提出を求めました。そして「赤木さんらまじめに働く官僚にとっては、非常に厳しい時期だった。公文書の改竄を命令され、そのうえで人事で圧力をかけられる。こんな状態を生んでしまった」とし、安倍・菅政権での忖度・人事局人事を批判しました。同時に、自らの政権ができた場合のキャリアへの期待を集めたい思惑もにじみ出た発言です。

●世襲全否定「かつての民主党はやり過ぎだった」

北海道3区で、荒井聡議員が今期で引退し、長男の学校法人3代目理事長を擁立することが決まったことについて。枝野さんは「新・立憲民主党として改めて世襲をテーマにして話し合ったことは無い」としつつ「あまりにも世襲の人が多過ぎる」とし、最初の埼玉5区で元衆院議長の世襲である自民党の福永信彦さん(落選後は県野球連盟会長)に惜敗・比例復活したときの無念を吐露しました。しかし、「機械的に駄目だというのはやり過ぎだ」とし「かつての民主党はやり過ぎだった」としました。これは非常に珍しい、岡田克也常任顧問・野田佳彦最高顧問を暗に批判した発言。世襲問題では2012年の衆・長野3区の件が先々月の参・長野県区で「逆・全否定」された政治状況となっており、世襲については大きく方向性を変えた発言だといえそうです。

●NHK報道はおおむね正しい

国会閉会後のNHK報道の「来年の通常国会に消費税時限的5%法案を出す」「立憲と国民の一本化に乗り出す」との報道は正しかったことが確実になりました。枝野代表は選挙のいかんにかかわらず「早い段階で時限的な消費税減税を約束しているので、できれば来年の通常国会に出したい」としました。質問をした私が、立憲と国民がバッティングしている小選挙区は1つしかないのではないかと指摘しましたが。枝野さんは「それとは別に3つある」と指摘し、福山幹事長・平野代表代行兼選対委員長とが国民と水面下で3つの選挙区の一本化を進めていると明言しました。

●補正予算の骨格を示すとの二階幹事長発言

自民党の二階幹事長が補正予算案の骨格を示して選挙にしたいとの趣旨の発言をしたことについては、先々週、「通常国会を延長して補正予算案を編成すべきだと主張した」としました。そのうえで「今から編成を指示しても1か月かかる」とはいえ、補正をやるべきだとしつつ、「仮に骨格のまま選挙をした場合は、その後、私たちが補正予算案を提出することになる」と強気な姿勢を示しまいた。

まあ、全般的に枝野礼賛のような記事に読めるでしょうが、かなり総理の風格は出てきたと思います。

2021年6月30日 #枝野会見 

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